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2007年 11月 15日
Dialog in the Dark ダイアログ・イン・ザ・ダーク / 旧赤坂小学校
 
  Dialog in the Dark(DID)
  ダイアログ・イン・ザ・ダーク

  暗闇体験約1時間(所要時間約1時間30分)
  金額:3,500円(前売) 4,000円(当日)
  ユニット定員:8人

内容はいたってシンプル。

目の見える参加者8人+目の見えない引率者1人で
真っ暗闇を歩いたり、遊んだりするだけ。

今年が9回目。
去年から行ってみたいと思っていた。


行く前から「イケル」と思っていた。
行ってみて「イケタ」と思った。

他の人よりも暗闇に慣れるのは早かったし
恐怖はほとんどなく、新しい世界が単純に面白かった。

そう。
「目が見えない」というそれだけで
私はそれを「新しい世界」だと思った。

そのくらい
色と光と線のない世界は衝撃的だ。

どこまでいっても
どれだけ目を凝らしてみても

そこにあるのは暗闇だけだ。


この世界では
普段、意識していない能力を使う。

例えば。
声の反響で自分のいる空間の広さを把握したり
手触りや匂いでモノを判断したり


無限に広がるこの暗闇に一人置かれたら怖いけど
隔離された空間の中でだったら楽しめる。

楽しむための前提条件は
周りにいる人間が自分と同じ状態で、なおかつ
安全で守られている場所にいるということかもしれない。


このイベント自体が
「視覚に障害のある人の気持ちを分かりましょう」的な発想ではなく

「いつもと違う世界を楽しんでほしい」
「視覚に障害のある人の雇用を作り出せたらいい」という考えなので
変に構えることなく楽しめたというのもある。

感想文を書くために読む本やアートやコンサートが
あり得ないくらいつまらないのと同じだ。


単純に。
未知の体験をしたり、知らないことを知るのは楽しい。
遊園地でジェットコースターに乗るのと同じ。

「視覚ゼロ」というのが他の感覚に比べて想像しづらいだけに
余計、興味をそそられたのかもしれない。



2006年は南青山の梅窓院 祖師堂ホール
2007年は赤坂の旧赤坂小学校

  (以下、HPより抜粋)
  まっくらな中での対話。

  鳥のさえずり、遠くのせせらぎ、足元の葉を踏む音と感触、
  森の匂い、土の匂い、森の体温、街の息吹。

  ダイアログ・イン・ザ・ダークは、日常生活のさまざまな環境を
  織り込んだまっくらな空間を、聴覚、触覚、嗅覚、味覚など、
  視覚以外の感覚を使って体験する、ワークショップ形式の
  「暗闇のエンターテイメント」です。
  <アテンド>の声に導かれながら暗闇の中を進み、視覚以外に
  集中していると、次第にそれらの感覚が豊かになり、
  それまで気がつかなかった世界と出会いはじめます。
  森を感じ、小川のせせらぎに耳を傾け、バーでドリンクを
  飲みながら、お互いの感想を交換することで、これまでとは
  すこしちがう、新しい関係が生まれるきっかけになります。





 


会場には15分くらい前に入る。
赤いソファがいくつかあり、カップルや女性のペアが談笑している。

きっとこの人達と周るのだろうと考えつつ、渡されたパンフを読む。

帽子やアクセサリー、鞄なんかは全てロッカーにしまう。
万が一落した場合に拾うことが不可能だからだ。

ブーツやヒールを履いている女性には
無料でスニーカーを貸してくれる。

時間になってスタッフの女性(目が見える人)に
案内されて扉の中に入る。

まだ真っ暗ではない。
オレンジの柔らかな灯りが足元を照らす。

薄暗いので普段よりも注意しながら階段を上っていくと
辿りついた小部屋でアテンド(目の見えない引率者)が待っている。

注意事項などの話を聞いた後、「それでは」といった感じで
間接照明の読書灯のような灯りが消される。

ほぼ真っ暗だが、かろうじて外のオレンジの光が入ってくる。

初対面の8人+1人。
暗闇の中では声以外コミュニケーションが取れないので
呼び合う時の名前などを紹介する。

真っ暗な中での自己紹介。
不思議な感じだ。

昔呼ばれていたあだ名なんかを、ということで
私は「のびーです。」と名乗った。

アテンドは「きのっぴ」
きのっぴは真っ暗なほうが緊張しないで話せるみたいだ。

うちらが「見えてる」という事実が緊張させるのだろうか。


いざ突入。
ちなみに眼鏡をかけている人はここでスタッフに渡す。

そう。どっちみち見えないんだから
かけないほうが安全でいい。


幾層にも重なった黒く重たいカーテンを掻き分けると。


そこには漆黒の闇が待っていた。


衣擦れの音や話し声がするので周りに人がいるのは分かる。
でも見えない。自分の掌さえ見えない。

見えるのは黒だけだ。


離れたら置いていかれるという恐怖心からか
8人は密集して立ちすくむ。

DIDの経験者は誰もいないみたいだ。

声の響きから、先ほどの待ち合わせ室よりも天井が高いことが分かる。
そう、ここは体育館だった。

そろそろと動き出し、近くにマットが置いてあったり
壁がある位置などを把握する。


「周りにいる人と手を繋いでくださーい。」


きのっぴにそう言われて
8人は暗闇の中で手を握り合う。

8人のうち男性は2人だけで私の両側は女性だった。
私よりの少し背の低いその女性の手は、温かくて柔らかかった。


「誰とも繋いでない人いませんかぁ?
 それじゃぁ手を離して座ってください。」


前に誰がいるかも、隣が誰かも分からないまま
私達は体育館の冷たい床に腰を下ろす。


「ここにボールがあります。今からキャッチボールしますねー。」


それは動かすと音が鳴る、バレーボールくらいの大きさのボールだった。


「誰か最初にボールを受けたい人~?」

「はい!」

「えー。お名前は?」

「みさっぴです。」

「いきますよー。」


そうやって声を頼りにボールを床に転がし、順に渡していく。
最初は本当に取れるのか渡せるのか不安だが、これが案外やればできる。

そうして多少暗闇に慣れた頃、部屋を移動する。
体育館を出る時に杖をもらい、それを頼りに進む。

次の部屋は学校の裏山をイメージした広場で
鳥の声が聞こえたり、植物が生い茂っていた。

地面の一部が土になっていたり、砂礫になっていたり結構凝っている。

途中、階段を降りる。

みんなは「わーわーきゃーきゃー」と言っていたが
うーん、私は案外平気だ。

この頃になるとアテンドのきのっぴの声が少なくなり
参加者自身でお互い伝え合っていこうという意識が強くなってくる。

「ここから階段!」「右側に手すりがあるよー」
「ごめんっ。誰かにぶつかった」「ちょっと座りまーす」
「わぁ、この葉っぱツンツンしてる」「えーどっちどっち?」

そんな声をよそに、私はさくっと数段の階段を降りる。
なんだか杖もいらないみたいだ。

音のする方向に行ってみると、そこには池のようなものがあった。
手を伸ばしてみると水の冷たさが気持ちよかった。


「こっちに池があるよー」


他の人達が池に集まってくる頃には
一人で辺りを歩き回って空間を把握しようとしていた。

おそらく体育館の一部を裏山に見立てて
起伏のある道や階段を設置しているのだろう。

植物はそこに生えているのではなく、もちろん鉢植えだったし
広いと思っていた空間は案外狭いものだった。

目が見える状態で歩いたらほんの数歩だったかもしれない。

手すりのようなものに腰掛けながらそんなことを考える。
あ。また変なもの見つけた。


うねうねと曲がりくねった階段を上っていくと
そこはお待ちかねの音楽室。

トライアングル、木琴、ピアノなど
手当たり次第好きなものを奏でていく。

隣の美術室では絵の具の筆や野菜、手の置物など
様々なモノが縦1m横3mくらいのテーブルに置かれていた。

さらに細い通路と階段を上っていくと
最後にたどり着くのが用務員室。

畳なので靴を脱いであがりこむ。

きのっぴがどこからかアツアツのおしぼりと
冷蔵庫から冷えたジュースを取り出して配る。

ジュースはオレンジジュース、グレープフルーツジュース
ウーロン茶から選ぶことが出来る。

見たところ(って見えないが)
どれも普通の200ml缶のようだ。

私は不思議に思って聞いてみた。


「ねーねー。真っ暗で何にも見えないのに
 なんできのっぴはジュースの種類が分かるの?」


これが引き金となって、しばし討論となる。
「缶の形が飲み物で異なる」というのが大半の意見だったが
私たちが触る限り、その違いを見分けることはできなかった。


「あはは。みんな分かった?
 実は○○○だから分かるんだ。」


えー。なーんだ。そんなことか。
こういうことって意外と盲点なんだよなー。

と、畳に横になってくつろぎながら考える。
うーん。畳はやっぱり気持ちいい。

そうして1時間たらずで学校の冒険は幕を閉じたのだった。
 

by nobiko9 | 2007-11-15 17:18 | 外ヲシル


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