カテゴリ:恋愛スル( 600 )

2010年 06月 17日
旅行後のデート。part2
 
どこ行きますか?


笑いながら彼が私に聞く


「今日はこんな格好だし、立ち飲みとか居酒屋ちっくなとこがいい。
スカートだったら六本木のあのお店に連れてってほしかったけど(笑)」


結局以前にも行ったことのある
安くて美味しくてお気に入りのお店で軽く飲むことにする


お店に向かって歩きながら私はこの歳になってやっと
入念に化粧をしたり何を着ていくか鏡の前で迷う

そうした人たちの気持ちが分かるようになった


もっと可愛くありたい
もっと可愛いと思ってほしい

もっとドキドキさせたい
もっとドキドキしてほしい


中身とか外見なんてそんなのはどちらでもよくて

使える手段は120%使って
彼の思考や視覚をいかに楽しませるか

今ほど可愛く綺麗になりたいと望んだことはない

何でそんな単純なことに今まで思い当らなかったのだろう


いつもの店はいつものように混んでいて
かろうじて空いていたカウンターに滑り込む


「かんぱーい!!」


ビールで乾杯をする

おまかせで頼んだおつまみが届くまで
たまには真面目に仕事の話をしたりする


いや

思い返してみると
彼とはよく仕事の話をしている気がする

直接的な内容からお互いの仕事に関連する時事ネタまで

自分の考えよりも少し先に目を向けている人の話を聞くのは
悔しいのはもちろん本当におもしろい


そして

本の話になった


「本、読む人だっけ?」

「んー・・・本は、読まないんだよね。」


とても意外に思った
話している感触から絶対に読む人だと思っていた


「"読まない"というより"読めない"が正しいかも。」

読めないって、どういうこと?
 
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by nobiko9 | 2010-06-17 11:50 | 恋愛スル
2010年 06月 15日
旅行後のデート。part1
 
変態ドクター、ビール飲みいこーよー


彼は私のドクターでもちろん変態なので

天気がよくてビール日和だねとメールされれば

勢い余ってこんなメールを返してしまう



「なんちゅー誘いだー。いいねー。
ちょっとまって。今日はさぼり気味なので、調整します。」



外出の予定がなかった木曜日

まったく出かける気のなかった私は
会社で作業だけしに行く格好をしていて

こんなことならもっと可愛い洋服を着てくればよかったと
そういえば彼と会うのに初めてのパンツ姿かもしれないと思った


20時に駅で待ち合わせをする

大きな柱に少しもたれながら本を読む
周りの音が聞こえないくらいの音量で音楽をきく

彼のことを考えているから
本の内容も音楽もまったく頭に入ってこない


彼の手の感触や旅行先の夜景の美しさや日本酒の香りや
様々な記憶が霧のように流れていって気持ちがいい

しばらく目をつぶってそれらの記憶に集中する
映画のように風景がくるくると入れ替わって


そこで携帯電話が震えた


  まもなく到着ぅ!



我に返ってここは東京のど真ん中だと思い直して
本に栞を挟んで音楽を止めたプレーヤーとまとめて鞄にしまう

改札に目を向けると
背の高い彼の頭がひょっこりと現れて


私と視線が合うと
おどけたように笑って右手をあげた。
 
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by nobiko9 | 2010-06-15 00:37 | 恋愛スル
2010年 06月 09日
温泉。part8
 
で。今日は・・・帰るんだっけ?


お風呂に入ってエッチをしたらお腹がへって
ビールを飲んでしゃぶしゃぶを食べ始めて

こんなに寛いでしまってから
本当に帰るのか不思議に思って聞いてみる


「・・・・帰る?」

「車、大丈夫なんだっけ?」

「一応、48時間で借りたから明日の昼に戻せば大丈夫だよ。」

「んー・・・。」

「かえれ、る?(笑)」

「帰れないよねー。」

「ですよねー。」


結局この日は近くのラブホテルに泊まって

次の日に私の地元に戻ってきて
お気に入りのカフェでお茶をした

夕方になって窓からの景色が暗くなってきて

これで飲み始めたら
また帰りたくなくなってしまう


「そろそろ、かえろっか。」


私は意を決して彼に言う


改札までゆっくりと歩き
誰に会うかも分からない雑踏で

私は彼に軽くハグをして頬にキスをする

彼は私の右手を掴んでキスをする


指がするするとほどけて

私は彼の背中を見送りたくなくて

駅のホームで彼がいつもどんな気持ちなのか想像したくなくて


いつもそうしているように

くるりと背を向けて足早に歩き出す。
 
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by nobiko9 | 2010-06-09 20:03 | 恋愛スル
2010年 06月 08日
温泉。part7
 
・・・うわぁ。


内湯の扉を開け
中に入って私は思わず息を呑んだ

自分がいる場所が一番高い

すり鉢状の部屋は上から洗面台と脱衣所
そして最も低い場所に浴槽が見えた

浴槽は二つに分かれていて
一つには4人も入ればいっぱいの広さだ


朝もお風呂に入ったばかりだと思いながら
するすると浴衣を脱ぐ

湯気でもうもうとしている空間
ひんやりとした気分で階段を降りていく


洗い場もカランもなく
壁には石鹸やシャンプーなど使用禁止の文字があるのみで

とりあえずざぶざぶとかけ湯をする


改めて見てもため息が出る


浴槽は石造りになっていて
奥に大きな岩が構えている

大岩の手前には柵があって入れない
頭上には注連縄が揺らめいて神聖な雰囲気だ

岩からどんどんとお湯が流れ込んできて
ぼんやりしていると湯船の上だけが熱い


階段に腰をかけて
膝までとろりとしたお湯につかりながら

ゆっくりと足で湯をかきまぜる


ここには私しかいなくて

目の前にある注連縄の白い神重と

遥か高みにある小窓からの緑が私を見下ろしていて


実際にはお湯の流れる音だけがあるのに

外の雨音までもが聞こえてきそうで



ここはいったいどこだろう

私はここで何を思えばいいんだろう。
 
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by nobiko9 | 2010-06-08 13:56 | 恋愛スル
2010年 06月 07日
温泉。part6
 
ちょっと行きたいとこあるんだけど、いい?


そう言って彼が向かったのは

湖から数分の場所にある

知らなければ入らないような
狭い脇道を入って行った場所に悠然と佇む古い建物だった

突き当たりは少し広いスペースになっていて
数台の車が思い思いに並べられている

そこかしこから白い湯気がもうもうと上がっていて
奥に停めてある赤い車の隣の池も温泉のようだった


「部屋、空いてるか聞いてくるから待ってて。」


どうやら部屋貸しの日帰り温泉らしい

待っている間に何組かの客が建物から出てきて
車に乗り込んでいく


「大丈夫だって。行こう。」


飴色の引き戸をゆっくりと開けると
階段が目の前にあり奥は薄暗い

受付にいる年齢不詳のじいさんが
「18時までになります。」と無愛想に言った

本当に他の人がいるのだろうかと思うほど
館内はしんと静まり返っていて

歩くたびにギシギシと床が鳴る


ガラガラガラ


私たちの部屋は唯一の洋室らしく
10 畳ほどの広さに黒いソファが一組置かれている

壁には両手を広げたくらいの
黒を基調とした現代画が飾られていて

そして部屋の隅にはなぜか
小学校の第二音楽室にありそうなピアノがある


奇妙な部屋なのになぜか均衡が保たれていて
それは外の景色の素晴らしさを引き立てていた


降り続く小雨に映える緑

南から北に流れる白い影

その中に浮き上がる真っ赤な花


白い影はもはや霧なのか湯煙なのかも判然とせず
私はしばらくの間うっとりと外を眺めていた。
 
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by nobiko9 | 2010-06-07 20:12 | 恋愛スル
2010年 06月 07日
温泉。part5
 
おはよ。


昨日の夜にしたことを思い出すと
こんなにも普通に挨拶をしていることが恥ずかしくてたまらない


「おはよ。」


そんな私の気持ちを知ってか知らずか
彼は私のおでこに優しくキスをする


天気が良ければ朝の散歩に行こうと思っていたのに
朝霧が濃く小雨も降っているようだ

軽くお風呂に入ってさっぱりとし
ゆっくり目の朝食をいただく

普段は朝を食べない彼が「美味しい」と言いながら
魚や野菜やご飯を食べる姿を見るのは

なんて幸せな時間なんだろう


部屋に戻ってごろごろと朝寝を楽しみ

最後にもう一度部屋の窓からの景色を目に焼き付けて
名残惜しく思いながらドアを閉める

昨日見た時には蕾だった廊下の一輪挿しが
ぱっくりと諦めたように花開いていて

少しだけ悲しくなった



「お世話になりました。」

「ありがとうございました。お気をつけて。」


おそらく最後の宿泊客だったのだろう

女将さんと宿のスタッフと
何名もの人が外まで見送りに出てきてくれる


「どこ行こっか?」

「そだねー。どうしよっか。」


雨の土曜日

二人でいることは決まっているのに
何の予定もない贅沢


「珈琲が飲みたい。」


私がそう言って老舗ホテルの一階にあるラウンジに入る
ほんの少しだけ残るツツジを窓から愛でる


「綺麗だね。」

「こっちはまだ涼しいから少し残ってるんだね。
もっと早い時期だったら満開で圧巻だろうな。
それでも俺、こんなたくさん咲いているの見たこと無い。」

「東京だったら根津神社あたりでツツジ祭りやってるよ。
植え込みじゃなくて手入れされているのはほんと素敵。」


薄曇ほうが緑や赤は映えるんじゃないかと思える


「ねーねー、まだこんな時間(笑)」

「ほんとだ。昨日も思ったけど、後から考えるとあっという間に
時間が過ぎているのに、流れている時は何だかゆっくりに感じるんだよね。」


会う時はいつも突然で時間がなくて

だからこうやって現実味のない空間でぼんやりと時間が過ぎて

そしていつの間にか終わりがきていたら


それは

どれほど素敵なことだろうか。
 
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by nobiko9 | 2010-06-07 14:46 | 恋愛スル
2010年 06月 02日
温泉。part4
 
かんぱーい!!


内湯に入り素晴らしい食事を堪能して
それからはもちろん部屋で飲み直す

コンビニで買ったビールとワインと日本酒と
幸運にも手作りの生ハムとレバーペーストを手に入れていた


ビールを飲み干した後
彼は白ワインを私は日本酒を飲み始める


「電気、消そうか?」


そう言って彼が部屋の明かりを消した

湖は街灯りに照らされて
奥に見えるオレンジの光はまるで篝火のように揺らめいている

そんな窓からの景色は一枚の絵のようにすべてが完璧だった



「綺麗だね。」

「そうだね。」

「すごく、幻想的で。なんか、全部夢みたい。」

「ほんと。現実感がないね。」

「二人でこんな場所にいて、浴衣着て、お酒飲んでるなんて
本当に嘘っぽい。まだ出会ってから3カ月も経ってないんだよ?」

「そうだっけ?俺はもう、何年も一緒にいるような気がする。」



そうして最初に会った日からのことをお互いに話し出す


「ここでああだったら、次に会おうとは思ってなかった」
「普通はこんなことしないのに、なぜかこの時はしていた」
「自分はあの時にこう思っていた」「私は・・・・・・」



何かに急かされるように
お互いの気持ちを言葉にして紡ぐ

もしこれが夢で
一瞬のうちに覚めてしまうものだとしても

何の疑いも抱かないくらい
すべてがフワフワと漂っている

言葉にしても何一つ伝えられない気がしてきて
私たちはしばらくの間無言で窓からの景色を眺める


「見入っちゃうね。」

「そうだね。ぼんやりしちゃう。」


風の音と音楽に満たされた部屋で

どうしたらこの気持ちを伝えられるのか分からなくなって


私は

彼の頬に手をあててキスをした。
 
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by nobiko9 | 2010-06-02 14:45 | 恋愛スル
2010年 06月 01日
温泉。part3
 
ようこそおいで下さいました。


少し渋滞していたものの予定通りの到着だ

敷地に入ると同時に宿の人が出迎えてくれる
「お世話になります」と言いながら車から降りてキーを渡す


空は今にも雨が降り出しそうなくらい重く
風が冷たくて肌寒いくらいだ


「いらっしゃいませ。」


エントランスで靴を脱ぎロビーに通される


「ただいまチェックインの準備をして参りますので
お座りになってお待ちください。」


ゆったりとした造りのロビーでは
先客がソファに座っていた

窓際の席に目を向けると

三畳分はあろうかという程の大きな一枚ガラス一面に
湖と艶やかな緑が広がる



「素敵だね。」

「このガラスを下からここまで運んできたかと思うと
ちょっとすごいね(笑)」

「ほんと。」

「きっとさ、一枚でなきゃいけない必要はないんだよ。
でもさ、たまに、だからすごいなって思う客のためなんだろうな。
何枚かになってて、閾があったら全然雰囲気違うだろうし。」



私はすでにこの宿を選んだ幸運に感謝していた

香りの良い抹茶をいただきながらチェックインを済ませ
仲居さんに案内されて一輪挿しのある廊下を進む

和室で掘りごたつのある落ち着いた雰囲気の部屋からも
ロビーとは一段高い目線からの湖が望めた



「ご飯の前にお風呂入りにいこ?」

「そうだね。」



立ちあがって彼と目が合った


吸い寄せられるように身体が動いて彼の胸に顔を埋めた

ゆっくりとキスをして


今日会ってから初めてのキスをしていることに気付いた。
 
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by nobiko9 | 2010-06-01 15:24 | 恋愛スル
2010年 05月 31日
温泉。part2
 
久しぶりー。


助手席に乗り込んで
つい数日前に会った友達のように声をかけた


「車ありがとー。すごいピンポイントで到着(笑)」

「いえいえー。それにしても暑いね。」

「だねー。でも多分この後、天気悪くなると思うし、あっちのほうは
ちょっと涼しいと思うんだよね。何着るか、めっちゃ迷った・・・。」

「俺もよく分からないからたくさん持ってきた(笑)」



ハンドルに軽く手を掛けて話す彼の横顔を
抱きつきたい衝動を抑えながらゆっくりと見つめた

「ん?」と聞かれて「何でもない」と慌てて言い返す



「午前中は、仕事してきたの?」

「うーん・・・。ちょっと、ね。半日休むために頑張った(笑)」

「私も今日、有給取るのに、今週一週間バタバタだった。
お休み取ってくれてありがとね。」

「こちらこそ。お誘いいただきありがとうございます(笑)」



車内には彼の iPhone から音楽が流れて
空は青くて日差しが強くて風が気持ち良くて

これからの二日間を一緒に過ごせることが決まっているなんて


なんて

なんて幸せなことなんだろう。
 
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by nobiko9 | 2010-05-31 22:41 | 恋愛スル
2010年 05月 31日
温泉。psrt1
 
いい天気だねー!!近くまで迎えに行きましょうか?


彼の誕生日祝いを口実に
温泉に行くことになっていた

宿は私が手配して
車は彼が持ってきてくれる


普通の旅行だったら
午前中からの予定を立てたりと忙しいのに

宿の予約以外には何もなく
昼過ぎに出発するという手の抜きようだ


朝から髪の毛と爪と肌の手入れを念入りにして
お気に入りのワンピースを着て荷物を準備する

彼に会うのは3週間ぶりで
車を運転してもらうのも初めてで

緊張していいのか嬉しそうにすればいいのか
何も分からなくなって考えたくなくて思わず部屋の掃除をしてしまう


14時を過ぎて携帯が震える


「どもどもー。たぶん、すぐ近くまで来てると思うんだけど。」

「分かったー。すぐ行く!」


寒いのは分かっていたけれど
素足にサンダルを履いて鞄を手にとって家に鍵をかけた

1秒でも早く会いたくて走りながら車を探す

シルバーの車から彼が顔を出して私を呼んで
自然と笑顔がこぼれた。
 
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by nobiko9 | 2010-05-31 18:26 | 恋愛スル