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2007年 11月 14日
梅と紅葉を見に行く。Part6
 
  「覚悟しとけー。来るぞ(笑)」


そう。
それは修学旅行に来ている小学生の集団。

先生を先頭に、1列でこちらに歩いてくる。


  「こんにちはー!」
  「ちはっっ!!」
  「こんちはー!!」
  「こんにちは」
  「うーっす」


ほとんどの子供が元気に挨拶していく。
列が途切れるまでひたすら笑顔で「こんにちは」と返す。

7クラス分の子供たちに挨拶をするのは
さすがに少し疲れた。

梅と目が合って、思わず二人とも苦笑いをした。


戻ってきた静寂の中、私達は歩き続ける。

しばらくすると視界が開け
有名らしいポイントに到着した。


空はだいぶ曇ってしまった。
座りながら薄日の射す草原を写真に撮る。

その出来に満足し勢いよく立ち上がると
とたんに足元がおぼつかなくなった。


まずい。
調子に乗りすぎた。


理由はよく分からないが、私は
きちんと食事をしていても、めまいや立ちくらみが多い。

特に急激に立ち上がるとクラクラする。
落ち着かせるためにベンチの上に横になった。


  「どした?疲れた?」

  「ううん。ちょっと立ちくらんだだけ。
   少し休憩してもいい?」

  「おぉ。俺はあっちの看板見てる。」


仰向けになったまま、目をつぶる。
それだけで視覚以外の感覚の精度が、上がる。

風が流れや、生き物が葉を揺らす音や。
あんなにも静かだと思っていたのが嘘みたいだ。

誰もいないけど、数え切れないほどの生命がここにある。

自分はこんなにもちっぽけだけど
だからこそいてもいいのだと思った。

この世界のどこか隅っこに
ひっそりと置かせてもらえればいいと思った。


どのくらいそうしていただろうか。
少し冷たい風がちょうどいい温度で

頭の中ははっきりとしているのに身体は眠っているような
眠りに落ちる直前のような状態になった時だった。


  「ウィィーーーーーン・・・」


どこかで芝刈り機のようなモーター音がする。
我慢しきれなくなり、意を決して起き上がった。

梅が向こうから歩いてくる。


  「大丈夫か?」

  「うん。ありがと。戻ろっか。」

  「そだな。」

  「それにしてもなんだろね、あの音。」

  「ほんとな。ぶち壊しだよ。
   人がせっかく気持ちよくいろんな音を聞いてたのに。」

  「あー。私も。目つぶって聞いてたら面白かった。」


もしかしたらあの瞬間
梅も同じようなことを感じていたのかもしれない

そう思っただけで
訳もなく嬉しくなった。
 

by nobiko9 | 2007-11-14 12:14 | 恋愛スル


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