2007年 10月 17日
好きだと気付いて以来、初梅。part3
 
夜の風はすっかり秋になっていた。


  「うわ。結構酔っ払ってんですけど。」

  「さっさと歩け。」

  「あはは。はいはい。」


カラカラカラ。

ふわふわと歩く夜の町に
梅が引っ張るキャリーバッグのキャスターの音が響く。

その音が遠のいて
視界がどんどん狭くなる。

私は耐え切れなくなってその場にしゃがみこんだ。
頭を抱えながらつぶやく。


  「ちょっと待って。えーっと。うん。
   かなり冷静に考えて、かなり酔っ払ってるけど
   酔っ払ってるってことは分かるくらいの酔っ払い。」

  「まぁ、いいよ。」

  「でもね。少し休んだとしても
   これが回復するとは、到底思えないんです・・・。」

  「それじゃ吐くしかねーな。」

  「いや。ない。それは絶対にない。
   ・・・・・・仕方ない。うん。はい。行きます。」


意を決して私は立ち上がる。

歩くことに意識を集中する。
右足を踏み出して、次は左足を持ち上げる。

梅は涼しい顔をして先に歩き出す。
自分だって酔っ払ってるくせに。


・・・ダメだ。本当に気持ち悪くなってきた。

再びしゃがみこむ私。


  「休憩。」

  「はえーよ。」

  「・・・・・・。えーっと。うん。
   もう大丈夫だから。こっからならどうやったって帰れる。
   先、帰っててください・・・。もう大丈夫です。」

  「いや。とりあえず、そこの交差点まで。」

  「うん。」


10mほど先に交差点らしきものを確認する。

自分のつま先を見つめながら
なんとか立ち上がって足を踏み出す。

ミヒャエル・エンデのモモに出てくる道路掃除のじいさんが

「気が遠くなるくらいの長い道を掃除するには、
 目の前のことだけを考えることさ。そうすると気付いた時には
 一歩一歩進んできた道路がすべて終わってるんだ。」

みたいなことを言っていた。

なんで酔っ払っている時に限ってこんな記憶だけが鮮明なんだろう。
でもしかし。じいさんの言うとおり、気付いたらその交差点も通り過ぎていた。

梅はそのまま何も言わず
私の半歩先を、私の家の方向に歩いている。


単にふらついていたので何か支えが欲しかったのか
こんな時くらいしかチャンスはないと冷静な頭で思ったのか

私はいつの間にか梅と腕を組んで歩いていた。

ヒールのあるブーツを履いた私よりも大きい梅を
肩越しに左下から覗き込む。

真っ直ぐに前を向いて、私のことなんか見えていないみたいだ。

その横顔に、少し気持ちが落ち着く。
甘えすぎだと考え直して、自然に腕を離し、距離をとる。


恋人には甘えたくない。
でもそれ以上に。

恋人じゃない好きな男に甘えるのはよくない。

甘えるとしたら
彼女がいたり、私のことを友達として好きでいていくれる男友達に限る。


うん。まだ大丈夫だ。
もう、大丈夫。

気付くと家のすぐそばまで来ていた。


  「ありがとね。おやすみ。」

  「おう。またな。」


私達は笑顔で手を振って別れた
 
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by nobiko9 | 2007-10-17 09:25 | 恋愛スル


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