2007年 07月 13日
豆との付き合い。part1
 
携帯電話のない時代
連絡が取れるのは実家の電話だけだ。

「21時に電話する」と言われれば
玄関の黒電話の前で、ベルが鳴るのをひたすら待っていた。

電話線を延ばして夜中に暗闇の中で受話器を握っていたこともある。


それでも私達は最初
ほとんど会話をしなかった。

電話でも、会っていても。

待ち合わせをして
豆の自転車に二人乗りして
公園か川べりに行って

二人で黙って座っていた。
ただ、座っていた。

キスなんてしないし
手すら繋がない。

雨の日は
公園の遊具の中で雨宿りをした。

肩が触れるだけでドキドキしていた。


豆は煙草を吸っていて
私は景色を眺めていた。


同じような話を何度もし
話すことなんて何もないのに

その場を離れようなんて思わなかった。

ただ一緒にいられることが嬉しくて
豆の時間を今、私にだけ注いでくれることが嬉しくて

今抱いてるような汚い感情から
一番かけ離れた場所にいた。


その時も、私たちは隣り合って座っていた。

目の前には燃えるような夕日が揺らめいていて
世界を真っ赤に染め上げていた。

景色を遮るものは何もなくて、ただ。
蝉の鳴き声がやかましかった。

空を見ていた。

しばらく。そうしていた。


制服のまま寝転んで。
一つ大きく伸びをしてから。
私は空に手を掲げて言った。


  「空気の粒が見えるね。」


豆は隣で煙草を吸いながら優しく微笑んでいた。


それからまた二人で。
黙って空を見ていた。

意味もなく安心していて
私はここにいてもいいんだと思った
 
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by nobiko9 | 2007-07-13 15:08 | 恋愛スル


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