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2007年 07月 12日
豆との出会い。part2
 
中学生で盛り上がる話題といえば
好きな人の話くらいだ。

私は豆と仲のいい竹田君が好きだった。

竹田君には彼女がいて
その彼女といつも一緒に帰っていた。

今思うと
彼女がいて、洋画や洋楽をよく聞く
そんな自分の知らない世界を知っている雰囲気に
単純に憧れていただけなのかもしれない。


放課後。掃除のあと。
じゃんけんで負けた豆と私は
ゴミを捨てた帰りで二人きりだった。

校舎の端にある技術室は静かで
私達は机に座って話をしていた。


  「野比さんて好きな人いるの?」

  「いるよ。」

  「誰?」

  「豆がよく知ってる人。」


そんな他愛もない話をしながら
笑い合っていた。

自分の秘密を誰かに打ち明けて共有するというのは
その人と距離が近くなるのだということを
この時初めて知ったかもしれない。

なぜなら

それほど好きでなかった竹田君のことを打ち明けるより
豆とこの秘密を共有した、という事実にドキドキしていたからだ。


学校から帰ると塾に行き
その帰りに貸本屋に行くのを日課としていた。

漫画が1冊数百円の時代に
50円で読める貸本屋は中学生にとってありがたい存在だった。

店の前に自転車を止める。

狭い店内に本棚に漫画や本がぎっしりと並べられているのは
なぜだかとてもウキウキとしたものだ。

そして豆も
この店をよく利用していた。


  「こんばんは。」

  「どうも。」


学校の外で会うというのは何だか特別のことで
みんな地元なのだからそれは当たり前のことなのだけど

狭い店内で目が合うと
なぜだか無性に照れくさかった。


そしていつの頃からか考えていた。

この角を曲がったら
今日は豆の自転車があるだろうか、と。


本を物色しながら考えていた。

今日はもう来てしまったのだろうか、と。


携帯電話もポケベルすらなかった時代。
その思いに気づいたとしても
何をするわけでもない。

席替えで近くになることを祈る、とか
班を作る時に一緒になれたらいいな、とか
係が一緒になればいいな、とか


卒業が近くなり
豆は地元の工業高校へ、私は私立の共学へ進学が決まった
 

by nobiko9 | 2007-07-12 00:21 | 恋愛スル


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