2007年 04月 14日
家に行く。Part1
 
雨で濡れて光るアスファルトの上に
桜の花びらがはりついている。

さすがにこの時間は寒い。
寄り添いながらタクシーに乗り込む。

少し前まで私のフルネームも知らなかった人と
一緒のタクシーに乗って家に行くなんて笑える。


タクシーを降りてから
手を繋いで、言葉少なに歩き出す。

角を曲がると小学校の桜が白く光っていた。
辺りはしんと静まり返り、自分の心臓の音が聞こえそうなくらいだ。

大通りからしばらく入ったところにある
茶色いマンションの中に入る。


  「まじで汚いからちょっと待っててもらってもいい?」

  「全然いいよー。」


そう言って彼は部屋の中へ。

私はしばらく。
階段の踊り場の窓から外を見ていた。


なんか。
誰かに騙されてるみたいだ。


好きな人が同じタイミングで自分に好意を持ってるかもしれなくて
その人と今、一緒にいて。部屋まできて。

そんな都合のいいことが
この世の中にあるんだろうか。

これならまだ。宗教に勧誘されるとか
何人もの女と付き合ってるとか

そういう酷いことをされたほうが納得できる。

一目惚れなんてしたことなかったし
こんな短い時間で、そしてこんなに強く
人に惹かれたこともなかった。


  「おまたせ。上がれるようには、なった(笑)」


彼がドアを開けて顔を出した。

男の一人暮らしで2DK。
一部屋は完璧に物置。

もう一部屋にはパソコン、ゲーム、洋服。
本に漫画にガンプラまであって。

いったい、何を片付けたっていうんだ。
まぁ。ものすごく男の人の部屋って感じだけど。


  「モノ多すぎ。」

  「だから言ったじゃん。俺は隠さないオタクだって。」

  「女いないっていうの。ちょっとは信用したかも(笑)」

  「だろ?いたらもう少しマシな部屋にしてるよ。」


足の踏み場がないのでベッドに座って
かなり手の込んだガンプラを見る。

トイザラスでも楽しそうに見てたもんなぁ。

二人で座って話をして。
なんだか。距離が近いことに慣れてきた。


思わず笑みがこぼれる。

だいたい。誰が予想しただろう。
ほとんど面識もなかった彼とこうなったことを。


  「何、一人で笑ってんの?」

  「いや。だって改めて考えると。うける、この状況。」

  「二人で会ってるの?」

  「会社の斉藤さんとか田中さんが聞いたら絶対に驚くよね。
   あの日に名刺もらってなかったら今はないんだもん。」

  「そりゃぁ、驚くでしょ。ちょっとそのリアクションを見てみたい気もするけど。」


彼が立ち上がって部屋着に着替えてる間
私はあまりの眠さにベッドに横になる。

着替え終わった彼が
ベッドに座って私のほうを向きながら言う。


  「もしかしてけっこう眠い?」

  「うーん。昨日もあんまり寝てないからなぁ。」

  「・・・・・・。」

  「ん?」

  「いや。可愛いなぁと思って(笑)」


目が合って。どんどん距離が近くなって。
私は彼の首に、下からゆっくりと手をまわした。

あぁ。おちるってこういうことを言うんだなぁ、と思う。

あぁ。やっぱり。
私の直感は当たるのだと思いながら彼の右耳に囁く。


  「だって。好きな人の前では
   誰でも可愛くなるんでしょ?」


それに答えるように彼の唇が首筋に触れる。
そして。それから。


初めてのキスをした。
 
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by nobiko9 | 2007-04-14 06:29 | 恋愛スル


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